橘玲さんの連載「セカイの仕組み」より。

面白い記事だったので紹介。。。

「ヘッジファンドの帝王」
「イングランド銀行を打ち負かした男」
として知られるジョージ・ソロスはサブプライム直後
警世の書『ソロスは警告する』で概ね次のように警告した。

市場は不完全なものであり、政府など外部からの介入がなければ正常に機能しないものであるにもかかわらず、「市場原理主義者」は市場がそれ自体で完全だと考え、野放図な規制緩和を行ってきた。世界金融危機で「超バブル」が崩壊したいま、市場原理主義の時代は終焉を迎えた---。

ソロスは早い時期から市場の暴走に気づき
警告を発していたことは間違いない。
・金融機関の融資が過剰であること
・デリバティブが制御不能のリスクを作り出していること
を正確に理解しており、その慧眼はさすがというほかない。

だがこの話は、「予測と成功はかならずしも一致しない」
というもうひとつの教訓を教えてもくれる。
その常人離れした慧眼にもかかわらず
ソロスの投資は大失敗に終わったのだ。

ソロスは不動産バブル崩壊から世界金融危機となり
最終的にはドル崩壊を主張していた。
しかし逆にユーロ資産を売却してドルを買い戻す動きが加速。
世界金融危機でドル崩壊は起こらず、ユーロ危機が先にやってきた。

ソロスはドル売りユーロ買いの巨額のポジションで
莫大な損失を被ることとなった。
不動産バブル崩壊と金融危機を正しく予想したなら
そこから生じる経済事象は地価と銀行株の下落なのだから
REITと銀行株を空売りすればいい。

ソロスの予想は途中までは正しかったのだが
ドル崩壊を引き起こすと考えてしまった。

市場が複雑系であれば、因果律がひとつ増えるごとに
予想が当たる確率は大きく下がってしまう。
市場の大きな歪み(バブル)を発見して未来が見えたら、
直接の因果関係に賭けるのが最も勝率の高い投資戦略になる。